先日の「スーパー耐久」では、「Audi RS3」をお供に菅生まで行ってきましたが、今回足を運んだのは「スーパーGT」の菅生ラウンドです。そして、今回の旅のお供に選んだのは、今年デリバリーが始まったばかりの「Audi A7」です。
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これで菅生には自分の「Porsche 991」、「Audi RS3」、そして今回の「Audi A7」と3台のドイツ車で向かったこととなりますね(笑)、まぁクルマ好きの日常なんてそんなもんでしょう。・・・そして、RS3程しっかりとしたものではありませんが、往復含め約2,000km程度を一緒に過ごしたこの「New A7」についてのインプレッションをまた懲りもせず皆様にお伝えしようと考えています。毎度のことではありますが、素人インプレッションですので生暖かい目で見守っていただきつつ、なんとなく皆様の日常のパートナー選びの参考にしていただけますれば幸いです。
では、行ってみましょう!
● Audi A7とは?
さて、今回のパートナーである「Audi A7」ですが、実は2010年に初めて投入されたモデルであり、Audiのフラッグシップセダン「A8」のクーペボディ版もと言える、近年の「クーペセダン」ブームに追従するためのラグジュアリークーペセダンモデルとなっています。初代A7は2010年~2018年まで販売され、日本では2018年の9月に二代目となる現行型が発表されました。もちろん私が今回菅生を含む足としてしばらく乗っていたのはこの最新型であり、2019年モデルの「Audi A7 55 TFSI quattro S-line」となります。
大きなクルーザーの様に流麗なフォルムと、セダンベースであることに起因する居住性、その優雅さは都心部を走っていても豊かな毎日を想像させるに難くない美しさを放っていて、筋肉質なプレスラインやボディシェイプからエネルギッシュなビジネスフィールドで日々活躍なされる方の休日の足として乗るにふさわしい洗練を感じさせてくれます。旧モデルからA7は好きな車の1台ではありましたが、今回はそのデザインコンシャスなA7に対し、更に最新鋭のAudiテクノロジーが組み合わされ「都市部で活用するハイパークルーザー」として実力がより一層強まったことに大きな期待を持って乗り込みました。
さてそんな「A7」、私の場合はファーストカーではなくおそらくファミリーカーとしての評価をしようとした際に、欲しいと思える1台だったのでしょうか?これからインプレッションを通して、私なりにA7を分解し、私のライフスタイルの中におけるファミリーカーとしての役割に合うものなのか否かを評してみたいと思います。重ね重ね先にお断りしておきますが、あくまでも素人である私の一私見ですので、お読みになった皆さんには「共感」だったり、「反論」だったり色々あると思いますが、まぁそんなもんだと思ってください。
●(外装)サイズ感
まず「A7」の外装サイズです。日常のファミリーカーはX5ですが、なんとなく私のインプレのベンチマークは「911」で統一しようと思いますので、あえて「911」と比較してみたいと思います(笑)。
全長 | 全幅 | 全高 | ホイールベース | |
A7 | 4,975mm | 1,910mm | 1,405mm | 2,925mm |
991 Carrera S | 4,491mm | 1,808mm | 1,303mm | 2,450mm |
いやぁ・・・(汗)堂々とした大きさですよね(笑)。全長はほぼ5m、総幅は1.9m超えです。最近のプレミアムレンジはほぼこの位のサイズなんですけど、実際問題東京都内でこのサイズは「デカい」んです(笑)。杉並区とか入りたくない大きさです。クルマって不思議なもんで、幅は5cm大きいだけでも「かなり幅広だ!」って雰囲気に運転席からは感じることが多いですし、曲がるときにもこの「たかだか50cm程度」の全長の差で「あれ、曲がらんぞここ」的な現象も起きますので、数値の差以上に「A7」は大きいです。
特に、クーペセダン形状故、運転席からの視界は視野が低い位置にあるためかなり見切りは悪く、狭い道を通過する際の「車幅感覚」は慣れている人じゃないとかなり苦労をする可能性があります。視点が高い位置にあるSUV系列は見切りが良いですし、遠くまで見渡せますので同じ「1.9m前後」のボディサイズでも感覚的には全然楽に運転ができます。
実際問題ここしばらくは足として「Audi Q7」に乗っていたんですが、この子のサイズは「全長5,085mm×全幅1,970mm」とA7より更に大きいにも関わらず、視点が高いので楽々と運転ができました。ボディサイズは大きな問題ではありますが、同時に視点位置はもっと運転において重要なファクターを占めると思います。
じゃぁ、具体的なこの数字を構成しているスタリングを見ていってみましょう。
●(外装)エスクテリアデザイン
エクステリアデザインはご覧のように極めて流麗、低く締まったボディラインを持つスポーティーな外観です。よりアグレッシブな形状と大きに変更されたシングルフレームグリルが1.9mの幅をより広く見せ、且つ重心位置を低く見せています。
この斜め前からの雰囲気はめっちゃマッシブ(筋肉質)でもあり、大開口部となっているシングルフレームグリルが思いっきり現代Audiのアイデンティティを表明しつつ、重心の低さも視覚的印象にあたえていますので、この角度から見ると重量級のクルマというよりは、スポーティーなクーペにしか見えないと思います。しかしながらアゴの高さはご覧のようにかなり高く、日常的な使用で気を使うシチュエーションは少なそうです。
後ろから見るとなんだかちょっと近未来感が強いですね。最近のトレンドっちゅーか、どの会社もテールレンズの左右をつなげる傾向にありますが(どこも同じで飽きてくるんだよ!)、Audiのお家芸でもあるLEDをふんだんに使ったこのテールレンズはその造形や光り方含めかなり美しいです。光りの陰影で印象を大きく変える様々なプレスラインが施されたこれまた近年のAudiのお家芸でもある高度なボディワークにより全体的なボディサイズは大きいのですが、小さく引き締まった雰囲気に見せてくれる鮮やかなデザインだと言えると思います。
ザ・クーペとも言えるこのアングルからのボディラインはA7の特徴を大きく物語っていますし、単なるファミリーカーにしてしまわない都会的な洗練を強く感じさせてくれます。全体のサイズが大きいのでA5と比べると間延びしやすい難しいデザインを求められるA7ですが、この新型はハイウェストにし、上手にボリュームを与えたことで遠くから見た際にはA5に近いディメンジョンと、しかしながらA5にはない存在感を勝ち取ることに成功したのではないでしょうか。
全体を見ていただいてお判りいただけたと思いますが、今風のデザインではあるものの、必要以上の押出しは行われておらず、どの年代の方が乗っても違和感を感じないだろう「万人向けに洗練されたバランス」を持っています。メルセデスの方がもう少しお金の香りがしますし、BMWの方がもう少し野心を感じさせる。極めて清潔感にあふれ、中性的な魅力を与えられているのがこの「A7」の外装だと思います。・・・それが好きか、嫌いかはそれぞれの方の個性によると思います。ちなみに私個人の意見を書かせて頂くなら、A7のデザインは旧型の方が好みです。特にリアエンドはレトロ且つ、ヨーロッパに脈々とあるブサかっこいい「予定調和の破壊」を感じさせる唐突な造形を持っている旧型の方が「香り高き」(←ってどういう表現?)雰囲気を感じますし、フロント含め全体的にヌルっとしている旧型の方が「あえてクーペである」ことのセクシーさをより強く感じさせてくれる気がするからなんですよね。それに引き換え新型のデザインは「必要以上にマッチョ」であり、同時に上手に処理はされているもののやはり少し・・・「間延び」を感じます。並べてみるとわかると思うんですが、新型の「A5」のデザインの方が凝縮感とクーペデザインのうま味が詰まっていてより好感を持てるデザインになっているんですよね。
●(内装)インテリアデザイン
内装はこの型のAudiモデルのハイライトといっても過言ではないでしょう。元々内装の質の高さやハイテクの積極的な導入には定評のあるAudiではありますが、この「A7」・・・ほぼ室内に「物理ボタン」が存在しません。「A8」「A7」で初めて市販車に実践投入された「フルグラス・インフォテインメント」が装備されており、センターには「10.1インチ」と「8.6インチ」の大型TFT液晶画面が備わっており、もちろんメーター部分はおなじみの「バーチャルコックピット」(12.3インチ)となっておりまして、この3つの液晶画面(合計31インチ分)を駆使してすべての車両及びエンターテインメント情報を表示および管理します。
乗り込んでエンジンをスタートさせると目の前に光り輝く液晶画面だらけなので戦闘機か宇宙船でも乗った気分になる訳ですが、近年のAudiの「テクノロジーによる先進」はもうイケイケ感が凄いものがあります。・・・センター液晶はTESRAで一躍有名になりましたが、Audiでは上下を分割し機能を分けることにより使いやすさを向上させた・・・と思われます。もちろんこのセンターの2個の液晶は「ハプティック(振動フィードバック)」付きのタッチパネルですのでスマホ同様に画面を触って様々なファンクションを呼び出し、コントロールします。面白いことに、まったくの硬い画面ですが、操作をしようと指で触れると「画面が沈み込む」触感があり(実際には沈んでません、当然)、技術ってすごい!と意味のわからん興奮を得ることができます(笑)。
いや〜質感めっちゃ高いです内装。
液晶が点灯しているときはこんな雰囲気に見えます。エアコンの操作まで液晶パネルなんですよね〜。前後左右視界中画面!って感じですが、これが意外と慣れちゃうと逆に落ち着く「出しゃばり過ぎない液晶」のバランスになっています。
はい、ミッションのセレクター部分もつるっつるで高級ホテルのファニチャーか?と思わせるほどの洗練度です。ゴテゴテのメルセデス系とは対極の思想ですが、長く乗るには飽きのこないデザインで、乗れば乗るほど体に馴染んでくる感じはAudiならではのインテリアデザイン哲学なんじゃないかなぁ・・・と思います。
●でも意外と使いにくいタッチパネル
先進感は凄く、視覚的情報量も多いので素晴らしい!と手放しで褒めたたえたくなるこのタッチパネル化されたインテリアですが、ちょっと走りこめば(まぁ脳みそレベルでは走りこまなくても予測は出来ましたが・・・)少なくない「不都合な真実」に直面することとなります。パイロット仲間が液晶とボールコントローラー、タッチセンス化されたコックピットの使い勝手が「とても悪く運行上旧型の方が操作が速い」とよくこぼしている「Boeing787」や「Boeing777」(話は聞かないけど、Airbus A350も似たり寄ったりでしょう・・・)。そして最近ではこんなアメリカ軍の記事も出て話題になりましたよね?
そうです、この「A7」に搭載されているタッチパネルも、走行中の直感的な操作を妨げることが多く、運転中に危険を回避するため必要以上の集中力を迫られるケースが多々ありました。例えば、今までナビの縮尺を切り替えるのはセンターコンソールにあった「MMIダイヤル」と呼ばれるコントローラー(※下の写真の様なもの)をクリクリっと手探りで触って回すだけだったのですが、「A7」ではナビ画面である上の液晶を触り、縮尺バーを表示させたのちにそのバーの中の縮尺バグ(ポインター)を左右にずらして広域、詳細を切り替えます。これ、走っている最中にやろうとすると車の振動で指が左右に振れ、微妙な操作ができずなかなか適切な縮尺にたどり着きませんし、運が悪いと振動により指が「押し込んだ」と判断され違うモードが立ち上がったりします(笑)。結果運転中にこの画面の縮尺変更はあきらめ、バーチャルコックピット内のナビ画面の縮尺をステアリングのダイヤルで切り替えるんですが、2画面で効率的にナビ画面を見ていた自分とすると「圧倒的に不便」なんですよね。
また、かなり介入の強い「レーンキープアシスト」は高速走行時には邪魔になることが多く、特にコーナーの多い山間区間では切ることが多いのですが、なぜかこの「レーンキープアシスト」のON/OFFスイッチが下側の液晶上部に設定されていますので、走行中に触って「OFF」する必要があります。・・・ただ、これも上記同様、揺れている社内で幅1.5cm程度の領域をポン!と押すの・・・容易じゃないんですよ(笑)。しかも周りは全部画面なので、指を支えようと他の指を置く場所も液晶じゃないところを選ばないといけないので、結果画面を「ガン見」して操作しますので、高速道路での走行中に視線を前方から外すことになり結構危ないんです。
同じようにエアコン温度も液晶画面ですので、この辺は物理ボタンの方が圧倒的に楽ですし安全だと思います。乗り物は揺れますし、スマホのようにスマホだけを操作しているわけではありませんので、同じような体験をさせようってのに無理がある気がします。まぁ、エアコンは音声認識で「ちょっと暑い」とか言えば「何度に設定しますか?」みたいなアシスタンスが起動するんで液晶操作しなくてもいいじゃん!って思う人も多いかと思いますが、意外と私が読み上げた設定温度を理解できず、エラーになることも多く(笑)。ま、テクノロジーの見せたがりみたいな状態は長く乗る視点からは「逆に不便な体験」としてネガティブな感情が沸々とわいてきます(笑)。
とはいえ、この大きな液晶はナビは見やすいのと、止まっている車内で車両設定などをするのは非常に便利です。完全自動運転だったら最適な装置でしょうが、まだ人間が操作する現代では「もう少し物理ボタンを用意する」方が安全でもあり、直感的でもあり、ストレスが少ない気がしています。
● 運転した第一印象は?
さぁ、実際に「A7」を運転した印象をお伝えしていきたいと思います。まぁ動き出した直後に「でけぇ・・・」と思うのは置いておいて(笑)、室内がとても静かなことに驚きます。タイヤはブリジストンだったので、この子の高めのロードノイズは進入してきますが、ボディ全体の遮音が素晴らしくこの辺はフラッグシップサルーンの面目躍如です。小さめの音量設定でも素晴らしい音場でスマホ接続した音楽を楽しむことができ、長距離の移動でも音疲れをすることは皆無でしょう。家族を乗せて軽井沢まで夕食を食べに移動したりもしましたが、後席との会話も驚くほどし易く、ファミリーカーとして考えた際には「Q7」同様この静かさは圧倒的なアドバンテージです。
乗り心地という意味では本当に最近の2018以降くらいのAudiモデルで変更された足の味付けそのものといった感じで、旧来のゴツゴツしたバネレート高めの動きとは売って変わってソフト傾向です。というか、レースフィールド以外ではこの会社、実は足の味付け下手なんじゃないか?と思うくらい古いモデルは「足が固くて跳ねる」でしたが、新しいモデルは「フワフワしすぎてて船に乗ってるみたい」なんです。故に「A7」はとってもフワフワしています。最近乗った「Q7」も以前乗っていた「Q7」と足の味付けが変わっていて、「A7」の様なフワフワ足。車重もあるのでフワフワ感はより強くなっており、個人的には「Q7」を買うなら2017あたりのモデルをお勧めします。
話を戻しましょう。初期ダンピングは固め、そして中間以降はフワ~っとしたダンピングの「A7」の足ですが、現行「Q7」程の嫌な感じは少ないですね。おそらく重心位置にも起因しているでしょうが、長距離を走っている限り変な疲れはないですし、フワフワ感もある程度慣れます。ふつーに走る限りほぼ「FF」として制御される最新型の「quattro」は軽快感が高く、とてもスムーズに高速巡行をこなしてくれます。晴れ、雨、豪雨と様々な天候を一緒に走りましたがいずれの局面でもドライバーズシートで受ける印象に大差はなく、特に雨の高速では「4WS」による安定したレーンチェンジによって高い安心感を感じながら巡行することができました。後述しますが、エンジンも必要十分の出力とトルクを兼ね備えていますので、一瞬の追い越し加速の瞬発力もある反面、高い燃費実用燃費を記録していました(高速主体で長距離を走れば10〜12km/l程度かな?)。また、コースティングの介入はポルシェと比べて少なめだなぁ?と思っていたんですが、これはコースティングロジックの違い(私が自分の991とA7で感じた差)だったようです。A7はコースティングをMHEV(マイルドハイブリッド)で行っていたからなんですね。動き出しや、走行中のコースティングでどうも体になじまない動きがあるな~と(要するにあまり好きではない動き方を車がする)思っていた原因はコレでした。・・・たぶん普通に乗っている人にはなんも感じない感覚的な部分ですので、多くの人にはメリットしかない優良なシステムです。
「RS3」の時はコンパクト感が強く、乗っていて楽だ!と書いていましたが、「A7」はその真逆です。車内からの見切りが結構キツイので「でかい車に乗っている」感がとても強く、東北の狭い市街地や山道を走り抜ける際にはそこそこの「幅」に対する緊張感を迫られました。見切りの悪さという意味では「TT」系に通づるものがあるなぁ・・・と思った次第です。
● 3.0L V6ターボはどう?
エンジンは「V型6気筒・3.0L・TFSIエンジン+MHEV」が搭載されています。6気筒のインタークーラー付ターボエンジンです。出力は340PSを5,200rpm-6,400rpmで発生し、トルクは51.0kgmを1,370-4,500rpmで発生します。50キロ台のトルクを持っていますので1.9tにもなる車重ですが、非常に実用レベルでは不満のない出力を持っています。特に基礎となるエンジンが3.0Lですので、エンジン本体のパワーも十分にある点が低回転域やちょっとした動き出し(=ブーストが立ち上がっていない素のエンジン出力が発揮される領域)でもたつく感じがなく好印象です。どうしても2.0Lターボですと、ブーストがかかっている領域は力強く走りますが、ひとたびブーストがかかっていない瞬間にスロットを入れると「スカッ!」っとめちゃめちゃ心細い加速をする一瞬が現れるのがとっても嫌いな私としてはこの点においてベースが3.0Lであることの恩恵を強く感じていました。これ、地味に長距離を乗ると大きな恩恵なんです。明らかにこの「A7」での長距離が疲れないのはこの優れたエンジンも一役買っていると思いますよ!
ピークパワーは5,200rpm-6,400rpmとなり、普通の生活でここまで回すことはほぼないと思いますけど、瞬間の追い越し加速などで踏み込んだ際にも必要以上に上の回転数まで回す必要がないのは良い出力特性だと思います。諸元を読まずに運転している際にどうも4-5000rpmのパワー感が強く、それ以上の回転域でのパワー感に比べこの辺までで走る方がトルクとパワーのマッチがいい印象を得ていて、一瞬「これTDI(ディーゼル)だったかな?」と、レブカウンターのフルスケールを何度か確認してしまいました。日本国内では下手をすると4,000rpm以上一度も回ったことがない個体が結構な数今後発生するのでは?という位、低回転で十分な加速と巡航ができてしまうエンジンです。ムービングも余分な振動が少なく、官能性能はたいしてありませんが、極めて優秀な、精度の高い機械であることが伝わってくる良いエンジンだったと思っています。
● クワトロ、サスペンションセッティング
アウディと言えばクワトロ(quattro / 4WD)ですが、熟成が進みすぎていてごく一般的な道路を往復する程度ではインプレッションもクソもない・・・というくらい何も感じません(笑)。そういうシステムが一番安全なのは皆さんもご存じのとおりですが、本当にいつFFでいつ4WDなのかさっぱりわからん!という位自然です。・・・というより、かなりのスキッドが発生しない限り現代のquattroは基本「FF」ですので「4WD」になる瞬間はほぼ訪れていないのだと思います。
また、前回の「RS3」程峠を攻め込んで走っていませんので「弱アンダー」とか「弱オーバー」とか評価するレベルまで追い込んでいないわけで、今回の印象は「とにかくオンザレール」でしかありません(笑)。峠でも高速でも曲率や速度に対して完璧に計算された制御にて「4WS」も介入しますから、全長5mのボディでも長さを感じるシチュエーションは訪れませんでした。いや本当に4WSってすげーっすね。「Q7」でもモールの駐車場とか全然つらくないですもん。めちゃくちゃ攻め込んだ時に「A7」がどういう動きをするのか気になりますが、それを評価するには大きさとかを考えるとサーキットとか行かないとキツそうだなぁ・・・。
先ほどもちょこっと書きましたがサスペンションの設定は「マグネティックライド」装備車ではあったものの、基本の設定がどうも好きになれずここは「ちょっと嫌」という感じでしょうか。もちろん実用上まったく問題のない洗練されたダンピングですし、車内が不必要にピッチングやロールをすることなく、パッセンジャーが不快な気持ちになることがないことは断言できますが、クルマの動きという点での個人的に好みを反映させると、少し足が柔らかすぎるキライがありました。このへん中国市場とかのオーダーなんでしょうかねぇ?過去Audiの足は「突っ張っている」印象が強かったんですが、これは逆に「常に腰砕けている」寄りの味付けです(※あくまで雰囲気の話です。コーナリングなどで腰砕けて怖い、とかではありません。)ストロークが以前の味付けより圧倒的に増やされているんですが、その過渡特性の作り方にはまだ研究の余地ありではないかと思います。この辺はBMWやPorscheには「ストロークするのにフワフワしない」という減衰スピードを緻密にコントロールして味を設計する一日の長がある気がします。
ボディ剛性があるので、もう少しサスの味付けさえ上手にしてくれれば・・・と思うんですが、この私が感覚に合わない味付けが「Audiの味付け」なわけで、これが好きな方もいるでしょうから難しいところです。
● レーザービームが明るい!
近年のAudiの売りの一つといえばライティングテクノロジーですね。「マトリクスLED」と呼ばれる、複雑に制御されたLEDライトにより、オートで暗いときはハイビームを照射します。前方に車がいる場合、対向車が接近してきた場合などはLEDの配光を「車やヒトなどがいる部分のみ暗くして」眩惑を防いでくれます。真っ暗な峠道などでこの「マトリクスLEDヘッドライト」をONにして走りますと、強烈な光量故「昼間か?」というくらい前方がよく見えます(笑)。さらにこの「A7」には新開発の「レーザービーム」も装備されていますので、その明るさたるや半端なく、どんな真っ暗闇の峠でも何の心配もなく突き進むことができます。レーザービームは真正面に対しての極めて指向性の強い真っすぐな光を照射(サーチライトのような感じ)する機能なのですが、一定速度以上で条件が整うと自動的に照射されます。非常にわかりにくいですが、その点灯の様子を動画で撮ってありますので、ご覧ください。
近年は田舎に行きますと常時ハイビームで対向車がいても突っ込んでくる「キチガイ」が多いんですが、こういった先進技術により眩惑が少しでも少なくなってくれれば良いなぁと思っています。確かに目の前は明るい方がいいんですが、消せない人はハイビームはマジで点灯しないでください・・・こっち本当になんも見えなくなるんで。
● 総評
さて、総評です。
総合的な印象は「エネルギッシュで移動の多い方向けの高速ツアラー」って雰囲気でした。日々高ぶっている神経も、洗練された内装で落ち着くのと同時に、落ち着きすぎない適度な緊張感を残したインテリアデザインはバリバリとビジネスをしている方には好印象でしょう。併せて余裕のあるパワーと、ロングホイールベース、ワイドトレッド、quattroや4WSによるキビキビしつつも安定した走行性能は近所をうろうろするのではなく、休日は温泉やグランピング、遠隔地のグルメを目指して移動をすることが多い方にはベストマッチです。リビングルームの様な快適な空間がシュバァー!っと高速度で目的地まで移動しちゃうんですからね。ここまでの快適性や革内装、テクノロジーを盛り込んでオプション込みで1,300-1,400万円台というのは払える人にとって見れば大して高い買い物ではない気がします。
私自身、菅生や軽井沢などしばらく乗り倒していましたが、乗れば乗るほど体になじんでくる印象があり、広い室内、広いラゲッジスペースに助けられ家族で遊びに行くのが楽しくなりました。小さなお子様がいらっしゃる間はチャイルドシートに乗せる際にかがまないといけなかったり、ヘッドスペースが低い関係上狭さを感じることがあると思いますが、普通席に子供が座ることができる位まで大きくなられたご家庭であれば後席の広さも十分ですので問題なくファミリーカーとして機能しますね。街中をチマチマ動くより、週末は郊外まで高速を使って一気に遊びに行くぞ!って感じのファミリーに向いている印象です。
さて、恒例の「じゃぁA7をマイカーとして乗り倒したいか?」という問いに対する私の感想は、以下の様なものになってくるかと思います。
◆◆◆
シンプルに「A7」は視界の感じが苦手でした。ボディの車両感覚がつかみにくく、都心、郊外、狭い山道など様々な場所を移動する私にとってはちょっとペースを維持するための一体感を得にくい印象だな・・・という感じです。クルマ全体のパッケージングは非常に良いのですが、以下の点が私には少し向いていない印象でした。
● サスセッティングのアンマッチ(フワフワ感)
● タッチパネル操作
● 強いてあげるならばMHEV介入のエンジンフィール
この辺はどうしても「クルマに乗る」という事が大きなイベントである私にとって「単なる移動手段」以上のものを求めてしまう特性上、一般的な方の評価とはズレがあるようにも思えます。このサスセットも他の人が乗れば「乗り心地が良い」となる可能性が高いですし、タッチパネル操作も「走行中にそんなにいじらないし、クルマ任せだよ」という方にとってみれば停車時の操作体験は格別なものだと思いますので。
つまり「Audiが目指しているクルマ作り」と「私が好きなクルマ作り」のギャップだとも言えますよね。何も考えず乗るなら本当に「Audi」って楽です。そこまで車へのシンパシーがない人に聞かれたら100%勧めます。完成度が高い。あまり運転に意思を持たず、目的地まで安全に(速く?)行きたい方にはもうそれはそれは最高の伴侶っす。
あと、同じ「Audi」を我が家に迎え入れるとするならばやはりSUVかな?と思ったことも大きいです。どうしてもあのアイポイントになれると長距離はあっちの方が楽だなーって思っちゃう自分もいます。荷物の出し入れも楽ですしね。・・・そういう部分を含めて「A7」は現在の我が家のファミリーカー向きかと考えた際には「時期早々」または「要検討」というステータスな印象でした。
なんか書いてて、あんま褒めてないなぁ・・・と思ってはいるんですが、あの誤解しないでほしいのが「基本めっちゃいいいクルマで、その上で気になる部分ある?」というノリで書いていますので。それに、基本褒め殺しのインプレッション記事よりはリアルがあると思いますよ(笑)。お金出して買うの皆さんですもんね、マジでこれ買います?って聞かれた際、そして今後ファミリーカーを入れ替える際にどう?って視点で考えて書かせて頂いています。個人的には「Q7」の方が好みです。ただ、最新型は足がよくないので、買うなら2017位のモデルがいいですね。あとはその位のモデルイヤーの「Q5」がどうかですよね。やはり都内暮らしとしては大きさは「Q5」位がベストです。
さて、次は何を乗りましょうかね・・・と思いつつ、最近「Audi S3」もしばらく乗っていたので、その辺をこの前の「RS3」との対比で書こうかなぁ・・・。ちょっと別の「Porsche」のインプレも書こうと思いますし、そろそろ「992」の雑感も書きたいですよね。まぁ、不定期なんで、またお会いしましょう!
ではまた!
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愛車ポルシェ911での日々を綴ったYoutubeもやってます覗いてみてください
⭐︎チャンネル登録などもしていただけますと非常に作者、喜びます(笑)。
●直接チャンネルへ飛ぶ場合はこちらのURLから動画一覧へ飛べます。
「Nine Eleven Cruise」:https://www.youtube.com/c/NineElevenCruise
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●軽快なスポーツモデル!「Porsche 718 Cayman」インプレッション記事はこちら!
●ファミリーカー然としたドライバーズカー!ポルシェ 958型カイエン(MY2018)試乗記はこちら!
●スポーツカーシリーズ!「Audi RS3」長距離インプレッションはこちら!
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