【購入検討者必見!】Porsche 718 Cayman インプレッション!

クルマ関係

先日ちょいと「718 Cayman」を乗っていることがあったのでそのインプレッションを今日はご紹介しようと思います。別に私自身モータージャーナリストでもないですし、それが本業でもないのであくまでもポルシェ好き、911乗りの個人的な感想としてのインプレッションになりますので、その点ご了承くださいませ。

また、内容自体は「718はものすごくよくできたクルマだった」という前提に立って書いていますので、一部厳しい指摘もあるかと思いますが「へぇ〜そんな風に思う人もいるのね〜」的な、生暖かい目でお読みいただけるとありがたいです。

718 Caymanとは?

さてさて、この「Porsche 718 Cayman」とはどういうクルマなのでしょうか。

ケイマン(Cayman)自体は2005年に987型のボクスター(Boxster)の派生として、オープントップを備えていたボクスターにクローズドルーフを与え、クーペスタイルの2座スポーツカーとしてポルシェが世に送り出したモデルです。既に997型となっていた911のボディサイズがどんどん大きくなることを危惧していたポルシェファンの中のピュアスポーツカー要素を愛する人たちに「程よいサイズのスポーツカー」として受け入れられました。

※2019/3/25追記:筆が滑っておりました。読者様のご指摘により「986型ボクスターの派生」と書いていた点を「987型ボクスターの派生」に改めました(すでに本文修正反映済)。

(初代987型ケイマン by Porsche official photo)

もちろん、クローズドボディ化にあたって大幅に強化されたボディ剛性からも、ハードなスポーツドライビングを好む層には愛され、「Cayman R」と言ったハードコアなモデルがリリースされる程の人気が当時あったのを思い出されます。

(Cayman R / Photo by eve.co.uk)

そんな初代ケイマンは、続く981型(2013年デビュー)でさらにスタイリングとハードウェアの更新を行い、クラブスポーツを愛する「走り系ユーザー」の中に熱烈なお得意さんを生み出すに至りました。レースの「GT4」カテゴリ参戦用のホモロゲーションモデル「Cayman GT4」は発売当時圧倒的な品薄になりましたし、現在でもこのGT4には熱狂的なファンが多いですよね。・・・私自身ジュネーブでこの「GT4」のデビューに立ち会った際、国内価格と装備、そしてやる気溢れるスタイリングに「買っちゃおうかな・・・」となったことを記憶しています。GT4は私が今乗っている「991型Carrera S」と同じエンジンを積み、若干のデチューンが施された結果385ps(Carrera Sは400ps)を絞り出していますから、小さいボディに超ハイパワーエンジンの組み合わせは刺激的じゃないはずがありません。また、GT4はMT(マニュアルトランスミッション)限定の販売であった点も、モータースポーツオタクの心をくすぐりました。

(Cayman GT4 Clubsport と Cayman GT4 / Photo by Porsche official photo)

そしていよいよ2016年、ケイマンは「718型」へ進化し今に至ります。「718」という本来なら「982型」とされるはずだったモデルの非連続性は、このケイマン&ボクスターシリーズ(通称:ケイボク)をより独立したラインとしてポルシェが採算ラインに載せてきたことを意味していますし、現在では911と比べる必要もないくらい、別個のポルシェラインナップである(クルマの目指す方向性、アイデンティティーが違う)ことを象徴的に世の中にアピールしました。尚、718という数字は1957年に製作された同社の4気筒ミッドシップエンジンレーシングカー「ポルシェ718」に由来するものであり、この由来が意味する通り従来「6気筒」だったエンジンが、718からは「4気筒」にダウンサイジングされることとなりました。

2016年といえば、991も後期型へのスイッチが行われた年であり、この991後期型もエンジンが「3.0Lターボ」へ、気筒数こそ変動がなかったものダウンサイジングされた年です。様々な排ガス規制や、環境対策、そしてニュルでのラップを縮めるためにトルクを増強する必要性から、全てのエンジン(GT3除く)がターボチャージドとなり、この718の4気筒もターボーチャージドの4気筒エンジンとなっています。

賛否両論あったこの4気筒化ですが、エンジンだけではなく、新世代のケイマンとして私が実際に数百キロを共にした感想をここから先ではご紹介していきます。

911シリーズとのすみ分け

さて、ケイマンのインプレッションに入る前に、もう一度「911シリーズ」「ケイマン(一部ボクスターも)」の棲み分けについて整理してみたいと思います。

RRとMR

言わずもがなですが911は「RR(Rear Engine / Rear Drive)」です(あ、そこの人、Turboがー!とか、Carrera 4Sがー!とか言わないように)。それに対してケイマンは「MR(Mid Engine / Rear Drive)」のミドシップ車両です。911のアイデンティティは「RR」ですので、その要素を持たないという点でまったく別ラインですし、目指すクルマの方向性も違うはずですよね。近年の911はそれでも重量配分の最適化や、スポーツ性能を少しでも高めるためにミッドシップ寄りのリアエンジン搭載位置に変えてはきていますが、やはりエンジンの多くはリアの車軸よりも後方に位置しており、依然として「RR」です。

※そんな「RR」にアイデンティティを持つ911の最高峰のレースカーとなる「911 RSR」が2018モデルから禁断のミッドシップ化となり、苦渋の決断でRRを捨てている点は非常に興味深いものではありますが、これも「RSR」のみではありますので今後も市販される911及び、RSRに至らないレースモデル(Cup等)は依然としてRRレイアウトを踏襲するものと思われます。

対してケイマンは車軸よりも前に完全にエンジンが乗っている「MR」ですので、理論上重量物が車体の中心に近い位置にありますので、重量バランスやヨー(ねじれ慣性)の制御に適したスポーツカーの黄金バランスを実現できる車体です。これだけでも、ケイマンが911よりも「尖ったスポーツ性能」を意識したパッケージングである点は容易に想像できますよね。

2+2と2シーター

更に「911」は「Monkey seat」と揶揄されることもありますが、ものすっごく狭いながらもリアシートが付いています。いわゆる「2+2」と呼ばれるパッケージングです。対してケイマンはこれまた男気溢れる「2座」仕様。フロントシートの後ろにはバルクヘッド(隔壁)が立ちふさがっており、人はおろかちょっとしたカバンを入れるスペースさえありません。パッケージと雰囲気だけで言えばフェラーリやマクラーレン、ランボルギーニと一緒です(笑)。「走る以外に何があるんだよお兄ちゃん?」とクルマから脅迫されるが如く、潔いスポーツカーなんですねこれが。

ぶっちゃけ911に乗り慣れていると、ちょっと買い物して駐車場へ行き乗り込んでから「あれ、この紙袋どこへ置くんだ?」となるわけです。911ならリアシートにポーンと放り込んで終わりですが、ケイマンですと、フロント又はリアのトランクを開けて収納する必要があります。

6気筒と4気筒

次は718化してからの相違点ですが、911は「6気筒」、そして718ケイマンは「4気筒」です。方式は共に水平対向エンジンではありますが、気筒数で差をつけてくるとは思いませんでした。多くのポルシェファンが「ポルシェは水平対向6気筒」だという先入観と憧れがありますので、この点は発表時にそれはもう、ものすっごい賛否両論入り乱れた訳です。ただ、スポーツカーとして考えると4気筒にすることでエンジンは小型化されますので、マス(重量物)が少しでも軽く、そして中央にマウントできる点でピュアスポーツとして素性はより高まったという解釈もできます。逆もまた然りで、軽くなった分メカニカルトラクションをどう稼いで推進力にするのかという点は別の悩みとして出てくると思いますし、後述しますが乗り味が大幅に変化しました。

サイズ感

911とケイマンではそのサイズ感も異なります・・・と書こうと思いましたが下の表をご覧ください。

 

全長

全幅全高

ホイールベース

718

4,385mm

1,800mm1,295mm

2,475mm

991 Carrera S

4,491mm

1,808mm1,303mm

2,450mm

 

言うほど違わない(笑)。

911が全長、全幅でわずかに大きいですが驚くほど違わない。そして何より、改めて数字をみてびっくりしたのが「ケイマンの方がホイールベースが長い」のです。その差わずか2.5cmですが、997から991になるときに10cmホイールベースが長くなり、劇的にその特性が変わったことから考えると、ケイマンも直進安定性やロングコーナーでの安定感は高まっていると思います。特に997以前の911シリーズと比べたらこっちのほうが圧倒的に安心感のある動きをすることでしょう。

(前型の981ですが、991と並んでも確かに大きさの違いはあまり感じないんです)

とはいえ、例えば「BMW M2 Competition」のホイールベースは「2,695mm」です。全然長いですよね。その意味ではポルシェはやはり現代のスポーツカーの中では圧倒的にショートホイールベースのクルマであり、その独特な操縦フィールは慣れを必要としますし、飼いならすにはそこそこの腕や経験が必要になる点は維持されているようです。

よく言われるグランツーリスモとしての911と、ピュアドライビングプレジャー用のケイボクシリーズ、という対比は単純にジオメトリ(車体の骨格バランス)で出来上がっているわけではなく、エンジン搭載位置やサスペンション、エンジン特性他の総合的なパッケージで差別化されていると思われる点がこの数字を見て気付かされたわけです。

718のスタイリング

では、早速718の外観を眺めながらインプレッションをしていきましょう。

今回乗っていたのは「Cayman」シリーズの中でも最も「素」の状態となる「Cayman」です。この上に「Cayman S」、「Cayman GTS」そして近日発表される「718 Cayman GT4」があります。

ぱっと見、やはり現代ポルシェらしいエッジの強まったデザインが目に止まります。フロントスポイラーがスラントではなく、強めの逆スラントのデザインを採用しているのも近年の特徴ですね。尖った感じには見えますが、個人的には昔のデザイン言語で作られている「アゴが突き出した」雰囲気の方が戦闘的で好きです。

ボディ中央部から後部にかけてはやはりミッドシップを意識させる流麗なボリューム感を感じられますし、様々な空間的な制約のなか生み出されている911のデザインよりも自由度を感じます。グラスエリアも広いですね。しかしながら結局のところドライバーの後ろにエンジンがあるという意味で911もケイマンもリアがワイドでボリューミーである点はアイデンティティーを同じくしており、ポルシェ然とした(知らない人が見たら911?っていうことも起きそうな)スタイリングです。

対極的に、フロントの造形は結構「911の名残が薄い」と言えると思います。伝統の「カエル顔」に決別し、今風なスポーツテイスト溢れるヘッドライト造形ですし、意識的に「丸い目玉」を拒否していると思われます。まぁ、この辺は数字コードで語られない他のポルシェ群「Macan」「Panamera」「Cayenne」と顔の統一感が図られているとも言えます。

もう一度おしりまわりを見てみると911と似てはいますが、ドーンっと「デカ尻」型のデザイン(実際に911の後ろに立つとあまりのお尻の大きさに驚く人もいるかと思います)よりは、スペース的な自由度が高いんでしょうね、適度に絞り込まれたよりスポーツカー風のテールデザインになっています。テールレンズが横一本の線で結ばれる造形は現代ポルシェの流行ですが、個人的には嫌いです。お尻の魅力という意味では圧倒的に「981」型に軍配があがると思っています。適切な言葉で説明しずらいですが、981はプレミアムスポーツカーの佇まいがあり、718はどことなく量産車の香りが漂う・・・とでも言えばいいんでしょうかね。ま、唯一センターエグゾーストでスポーツ感を担保していますが、この手のギミックは最近国産車でもかなり取り入れられちゃっているので面白みにはかけますね。

あと、車内から窓の外を眺めると目の前の景色が全然違います。911は丸い尾根が連なるフロントフェンダーですが、ケイマンでは鋭くそそり立ったエッジを強調されたフロントフェンダーですので、明らかに「違う車に乗っている」ということを意識させられます。また、サイズ的には大して変わりないはずですが、全体的に線が細く小柄に見えるというのはデザインとして面白いと思います、軽快さや俊敏性を感じさせてくれますのでこのデザインが好きな方は好きだろうな、とシンプルに納得できます。

718のインテリア

では乗り込んでみましょう。・・・ほっとんど夜中に走っていたので明るい写真がなくて恐縮ですが、まぁその辺比較したい方は各自動車誌のサイトでも見てください(笑)。

車内に乗り込んで真っ先に思うのは「あんま違わないな」ってことです。センターコンソールは991のものですし、それ以外のドアコンソールや天井のマップライト、シート形状なども基本的には991と同じですからね。特にこの車両には「スポーツクロノ」オプションも付いていましたので、見慣れた時計もあるし・・・と。

当然ケイボク系は伝統の「5連メーター」ではなく簡略化された「3連メーター」ですので、そこは思いっきり違和感として訴えかけてきます。まぁあとはレブカウンターのフルスケールが「9,000rpm」ではなく「8,000rpm」だったり、最高速が「330km/h」表示じゃなかったりとかありますが、微細な違いですよね。なので第一印象は「ほとんど違和感ない」ですんなりドライブが可能です。

718は991でいうところの後期の年代の車両なので、私のモデルと大きく違うのはナビが悪名高いポルシェオリジナルの「PCM(Porsche Communication Management)」になっていることが大きいかもしれません。確かにこれは使いづらかったです(笑)。

エアコンの吹き出し口は911シリーズのスクエアなものから、ケイボク系はラウンド型の丸いタイプになっています。慣れの問題でしょうが、私はスクエア型の方が視界がうるさくなく好きですかね。インテリアが必要以上に主張している車はあまり好きじゃないんです。・・・ただ、ステアリングはこの後期型のデザインと径の方が使い勝手が良いし、見た目もカッコいいのでこれは好みですね。私のも付け替えたいですが、ステアリングだけで30-40万ですって言われると「あぁ、そうですか(笑)」ってなりますので、そのままにしてあります。

インテリアまとめ。

まとめると、インテリアは991世代のポルシェそのものであり、質感やデザインフィール含めて結構好みですし、使い勝手もそんなに悪くないということでしょうか。当然車内の横幅が狭かったり、フロントガラスとの距離感で小さなキャビンに乗っている印象は強く受けます。リアに空間がないこと含め、想像以上に圧迫感のあるスモールキャビンだと感じさせられたことが個人的には印象に残りました。大柄な方が乗られる場合、結構狭く感じるでしょうし、助手席に大人が乗って2名で移動する場合は、関係性の近い方じゃないと息苦しさは若干感じちゃうんじゃないかなぁ〜?と思いますね。ま、それを逆手にとってデートに使いたいというのであれば、うまくいけばすごく距離を縮めやすい車内です。911だと狭いながらも、もう少しルーミーですので、ゆったりとドライブができます。

さっそく運転した第一印象は?

じゃ、ドライブに出かけましょうか!

地味に右ハンドルのポルシェ乗るの初めてなんですけど、危惧されたペダルの位置は予想と違ってそこまで壊滅的ではなく、特にブレーキペダルの位置はほぼ正面にあり使いやすかったですよ。ただ、左ハンドルだと右側の壁ギリギリに付いているスロットルペダルが、右ハンドルだとフェンダーアーチ分中央に寄っているので、普段の感覚で踏んでいると途中まで足は「半分壁を踏む」という状態になってました。運転中なんどもスロットルに置く足の位置だけは直しましたね。。。

それ以外はめっぽう自然です、はい。パドルで小気味良くシフトを変えながら乗るも良し、コンピューターに任せてイージードライブをするも良し。お利口なケイマンはなんのストレスもなく動いてくれるはずです。

ただ、しばらく運転して気づいたのは自分の911を運転している時と比べて、車速の維持や期待する動きを維持するために使っている回転数がだいたいいつもの感覚値より1,000rpm高いんですよね。なので、結構常にガオー!って言いながら走っている感覚で「俺スポーツカー乗ってるぜ!」って気分にはなるものの、わりと車内が騒々しいんです。

で、これはギア比が全然違うのかな?と思って調べてみました。

1速

2速3速4速5速6速

7速

718

3,910

2,2901,6501,3001,0800,880

0,620

991 C2S

3,910

2,2901,6501,3001,0800,880

0,620

 

一緒なんですよ、ギア比(笑)。

じゃぁなんで違うのか、と。同じ車速を維持するためにこっちは1,000rpm位多く回してるんだぞ?と。

まぁ、結果から言えば各シフトポジションのギア比は一緒なんですが、ファイナル(最終減速比)が991の「3,440」に対してケイマンは「3,620」とローギアード設定なんですね。いやー、ガッテン!やはり感覚値は正しかった訳です。そういう意味では回転を高めに保ってスポーツドライビングをしたい方にはベストなギア比だと思います。なんせ、991で回転上げて走ろうと思うと、常に各ギアで危険水域に(道路交通法上)なりますので。

ご参考までに991の各ギアを上まで引っ張った際の理論上の最高速をお伝えいたしますと。

「1速=75.8kmh」「2速=129.5kmh」「3速=179.7kmh」「4速=228.1kmh」「5速=274.6kmh」「6速=337.0kmh」で、笑っちゃうのが7速を回し切ると「478.3kmh」です(笑)※実際は風の抵抗とあまりにハイギアすぎて回りきりませんが。991のギア比って全開でレブまで合法的に引っ張れるのってなんと「1速」だけなんです(汗)。なので、皆さんサーキット行ってください。実際にはこれにスリップロスや抵抗が入りますので、僕がサーキットで使用している感覚だと、これの1割引いかない位が実際の各ギア最高速ですかね。富士のストレートで5速を回し切ると260kmh位で、そこからは6速にバトンタッチしています。

あと、この後のエンジンの評価につながっていく部分でもあるんですが、さっき「騒々しい」と書いた車内ですが、これは確実に、嘘偽りなく911より「やかましいです」。なので、スポーツカー然としたクルマに乗りたい!って方は気分が高まるでしょうし、デートカーとして穏やかに乗りたいって方には「なんかうるさい」ってことになると思います。・・・これはドライバーの後ろがリアシートで、かつバルクヘッドも複合材でしっかり作り込まれている911と、ドライバー直後にエンジンがありバルクヘッドも鋼鉄1枚で少し簡素に作られている718系の物理的な構造の差です。

もちろん、ドライバー直後にはエンジンよりもPDKがありますので、走行中はエンジンの発する爆発燃焼音と、PDKの発するメカノイズ、そしてエンジンそのものが発している別の種類のメカノイズが「わー!」っと後ろから降り注ぎます。注意して聞かないとあまり分からないPDKノイズと、ほぼエクゾーストの乾いた音が後方から聞こえてくる911系とは音の作りや、訴えかけるものが異なって設計されている印象です。

4気筒ターボってどう?

さて、冒頭でも書いた賛否両論を生んだ「4気筒水平対向ターボエンジン」です。

初代987型では水平対向自然吸気2.7Lエンジン(245ps)だった訳ですが、2代目981では同じ2.7Lエンジンが進化し馬力が278psへ。そして今回の4気筒ターボでは排気量こそ「2L」へダウンサイジングされていますが、出力は一気に「300ps」の大台に乗りました。トルクに至っては初代の「273Nm(27.8kgm)」からドドーンとジャンプアップして718では「38.8kgm」になっています。これは軽い車重に対してはめっちゃくちゃトルクフル!自然吸気エンジンで言うとふつーに3L以上のエンジン相当トルクを生み出しています。

スペック上では大進化し「どこが4気筒ネガなんやねん?」と両手を振って賛同したくなる素晴らしいエンジンですが、果たしてそうなのか?

結論から書けば

「走行性能上はまったくもってのネガなし!むしろこの4気筒すんごい!」です。

分厚いトルクと、可変ジオメトリを採用したターボによりターボラグも薄く、踏めば瞬時に(ある程度の回転があれば・・・の前提付きですが)トルクが立ち上がって爆発的な加速をしてくれます。それに加えてPDKです、パンパンとシフトを上げていけば、おそらく「遅い」と思う人がいないであろうレベルで猛烈な加速感を素のケイマンでも味わえますし、これが遅いと思う人はすでに「ジャンキー」だと思いますよ、正直。

とはいえ、勘のいい読者の方は私が「走行性能上は・・・」と書いたあたりにひっかかった方もいらっしゃるんではないでしょうかね?・・・ま、この書き方がこの「4気筒エンジン」への私の評価の主だった核心でして、走行性能はほぼ文句なしで優秀なこのエンジンも「官能性能」という意味では、スポーツカーのソレではないなーというのが私の印象です。

718エンジンのネガなポイント

まずもってエグゾーストノートは全く官能的ではありません。低くこもった音色で、アイドリング時は後ろから「ボンボンボンボン・・・」と多くの方が書かれているスバルのエンジンの様な音が聞こえてきます。低回転走行時はおよそポルシェ感のない単調なボクサーサウンドが車内にひびき、2Lの排気量を無理やり1.2barの高過給圧でドーピングしているので5,000rpmを過ぎた頃からエンジンは惰性で回っているような中回転域優先のエンジン特性であることが感じ取れます。トップエンドのヒト伸びがある通常のフラットシックスに比べると、研ぎ澄まされたエンジンを踏み込んでいっている感覚が薄いのは事実です。GT3系列のエンジンは別物ですが、通常のカレラ系でもエンジンは上に向かってパワーを炸裂させていく感じが強いのですが、この718のエンジンはトップエンドを捨てて走る方が気持ちよくトルクが乗る印象で、走らせ方もちょっと変わってくる印象でした。いわゆる「カムに乗る」という感覚は得られず、全域フラットトルクでのっぺりした印象を持つエンジンなんですよね。

AudiやVWっぽいというか、目を瞑って乗ったらなんか「他のブランドのスポーツカーに乗っている」印象を感じてしまうと思います。

 

「つまんないけど速い」

 

そんな最近のスポーツカーエンジンそのものだなぁと。

って言っても、各ムービングパーツの組付精度の高さやなんとも自然な加給のかかり方など、991後期のターボエンジンにつながる質感の高さは圧倒的なので、とてもレベルの高い次元での話として上記のネガがあると思っていただいた方がいいと思います。正直これが2Lかぁ・・・と自分の3.8Lを思いながら驚愕する訳です。だって税金全然違いますからね(笑)。

718の特徴、インプレッション

走らせていく中での718のインプレッションなのですが、ポジティブポイントとしてやはりボディの大きさというか重量物配置含めたMRとしてのマスの小ささ感は大きく貢献していると思います。とても車が小さく感じますし、キビキビ動く印象は911と比較した場合「活発」という印象を強く感じます。サーキットや峠を思いっきり攻めた訳ではないのでなんとも言えませんが、よく言われるノーズの入りは991はかなり改善されていますので、対991比では驚くほど鋭敏なものではないものの、991ではフロントタイヤに仕事をさせるぞ!という気分で動かす場面でも718は車そのものが「曲がりますよー!」と積極的に回頭してくれる印象が残ります。その分991から乗り換えると「なんか車がフワフワするなぁ」と鼻先の動きが落ち着かない印象も若干感じる、それくらいシャープな回頭性を持っている雰囲気です。

ネガティブポイントとしては、コーナリング中に結構な頻度でフロントとリアの動きがちぐはぐするというか、なんか別の動きをしているインフォメーションが入ってきてやや気持ち悪いと思う瞬間に出くわしました。はじめはなんでこんなことが起きているのかわからず、タイヤじゃないし、ショックの制御でもないし・・・ボディ剛性はあるはずだし・・・と悩んでいたんですが、パーキングエリアで諸元表を見てやっと気づきました。

ケイボク系は991と違い、リアのサスペンションシステムが「ストラット式」なんですね。991は「マルチリンク式」なので、ジオメトリ変化が小さくショックアブゾーバー等への入力もストラット式とは異なりますので、荷重移動や路面不正の受け流し方の流儀が991とは違うのは当然のことでした。また私の991には「PDCC(Porsche Dynamic Chassis Control)」も入っていますので、路面へのタイヤの面圧も強くこの辺に慣れていたことも違和感の理由だろうと思います。とはいえ、実際に結構フロントの動きにシンクロせず、リアが別の動きをする感はありますので、ある一定の速度以上のコーナリングでは慣れが必要だなぁと感じた次第です。

その延長線上でコーナリング中にググっとブレーキを踏まざるを得ないシチュエーションの場合、圧倒的に911シリーズの方が安心感があり、思い切って踏んで行けるというのはアドバンテージとしてある気がします。718の場合はググっと踏んだ時にこの溜め込んだ横Gをどこかで発散させちゃうんじゃないか?という不安がよぎるんですよね、車の動きから。その点やはりリアタイヤ直上にエンジンのある911の場合、ググーっとタイヤの面圧を確保できるのでそういう際につんのめって止まると言うより、車体全体が面で制動力を管理している印象が強いです。

さらに、荷重を強めにかけてコーナリングしている際、路面不正(凸凹など)に遭遇すると718は前後共サスがバタつく印象があり、それが恐怖感だったり、実際にラインを外すということにはつながりませんが、ちょっと身構える(挙動変化に対して)という点があったのはサスのセッティングなのか、単に911のリアヘビーに慣れているだけなのか・・・ですね。ミッドシップ使いの方のインプレッションも聞きたいところです。

最後に全然どーでもいいことですが、718の私が乗った個体の問題かもしれませんが、発信加速時のPDKのクラッチミートがやや唐突です。推測するにこれは低速トルクが2Lで全然ないので、発進時にやや回転を上げてミートする設定になっているんですが、それでもトルクの細さを補うために911系のPDKで使われている「半クラ多用」のゆったりしたミートを行わず、ストール(エンスト)防止のためにやや半クラ使用を緩めにして一気にミートしている印象があります。なので、街中は911より丁寧なスロットルワークが必要です。

総評、718が向いている人

さて、総評として718をお勧めできる方はどんな方か・・・と勝手にまとめてみます。

1)一人乗りが多い方、又は車内が窮屈な車でもパートナーが文句を言わない方
2)人馬一体感が好きな方
3)エンジンを回して走ることに至上の喜びを感じる方
4)スポーツカーという雰囲気がシンプルに好きな方
5)ポルシェというブランドに911をダブらせて愛していない方

って感じでしょうか。

「人馬一体感」ですが、これはもちろん911にもあります。ただちょっと質が違う印象です。昔のポルシェは「ポルシェを着る」と言われたほど体にフィットするのがポルシェたる所以だった訳ですが、現代の991位になるとボディサイズやその馬力から「着る」というよりは「乗る」に近くなっている印象です。システムとしての911を正しく理解し、正しい操作で911 を思い描いたラインにのせる。人馬一体の間にもう一層なにか「システムと会話する」という独特な人馬一体感を必要とされているのが現代911かと。それに対し、718系はもっとシンプルに、ピュアーに車と一体となって道を攻めてゆくカタルシスがある印象です。

また、ノイズレベルやキャビンの広さ、攻撃的なスタイリングなど「ザ・スポーツカー」という雰囲気をプンプンだしているのが718系ですので、休日の非日常を味わいたいというスポーツカー目線で車を選ばれる方には718の方が911シリーズより更にスポーツカー純度は高いと思います。

最後に「ポルシェというブランドに911をダブらせて愛していない方」ですが、これは誤解を恐れずに言えば、コストや目的、スタイリング、各種のデバイスの理想、乗り心地、走行性能など自分の求めるものが偶然718ケイマンだったというレベルの方が一番満足するのでは?ということです。「ポルシェに乗りたい=911に乗りたい」といういわゆる「ずっとポルシェのモータースポーツを見てきた、911の活躍に憧れていた」という方にはあまりオススメしないということですかね。たまたまスポーツカーを探していて、その他のブランドも検討したけど718がいいと思った。こういう方は最高に満足すると思いますが、少しでも「911への憧れがある」と言う方はおとなしく「911シリーズ(991以前のモデルも含め)」を選ばれることをお勧めします。

そのくらい車の立ち位置が違うモデルだということが今回理解できましたし、動きも違います。

何よりサービスエリアで振り返って自車を見たときの「?」という違和感は私には衝撃の残るものでした。そこにあったのは私の求めているポルシェではなく「718ケイマン」だったのです。

718のブレーキフィールやショートホイールベースの回頭感、PDKの正確無比なシフトワークは紛れもなく現代のポルシェが達成した世界観そのものです。それをベースに「911の世界観」を選ぶか「718の世界観」を選ぶかはみなさま次第かと。両方紛れもなく現代ポルシェそのものであり、と同時に実はまったく異なった世界感と使命を背負ったモデルだったということが理解できただけでも、とても良い機会となりました。現実ベースで考えればこの性能で600万ちょいですからね、超絶コスパいいですし、様々なサーキットや峠でも使い切りやすいパワーレンジなので、ドライビングプレジャーをより多くの人が味わえると言う点では圧倒的にケイマンの勝ちです!

実はもっともっと乗って遠出したくなっていたのは本当です。

乗れば乗るほど、なんか味わいが出てくるパッケージ。それが「718シリーズ」だったと思います。

ではまた!

◆◆◆

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この記事を書いた人

東京でプランナー・コンサルタントとして働きつつ、様々なフィールドで遊ばせてもらっています。

ON / OFF問わず日本各地、世界各地へ出かけることが多いこと、そして移動手段
である航空機が大好きなのでそんな日常を多くの人と共有しようとブログを書いています。また、最近では愛車ポルシェ911での日々を綴るYoutubeチャンネル「Nine Eleven Cruise」も更新していますので、こちらも是非チャンネル登録の上御覧ください。

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