前日の夜から降りしきる雨が少し弱まった午後、再び私は羽田空港に降り立っていました。本日は業務の出張としては珍しい「山形」への移動です。空港で一緒に山形へゆく事業パートナーと合流するのですが「まぁ機内で!」とカジュアルな感じでしたので、少し早めに空港に着いた時間はラウンジでメール処理でもしながら過ごそうと思います。
使い慣れている第2ターミナルではなく、本日は「山形便がJALしかない」という理由により第1ターミナル使用です。古びた第1ターミナルですが、かなり改修が進み昔の面影が減りつつある綺麗で現代風の景色に変貌を遂げてきているようです。平日、雨の午後ということもありターミナルはそれほど混むでもなく、適度な空間の余裕を楽しむことができます。
JALは平グローバル会員ですので「JAL GLOBAL CLUB」カウンターでチェックインを行い、そのままJGC用の優先検査場へ進みます。慇懃なカーペットが床に敷かれているあたりはANAとそのホスピタリティへの考え方の違いを感じることができて興味深いですね。新規投資はできない「8.11ペーパー」はあるものの、必要備品といいますか「投資」として見られない部分にはだいぶ浮いたお金を投入している感アリアリですので、発着枠の傾斜配分含めてANA側が「依然として不均衡、公平な競争下にない」と発言するのは単なるポジショントークとして片付けるのではなく、実際問題として「確かに不公平な競争環境にある」のだと私も感じる部分です。
ふら〜っと専用検査場をでますとこれまた昔の面影のなくなっためっぽう綺麗なエリアが顔を覗かせます。様々なお店の誘致、空間の作り方などは制約の多かっただろう第1ターミナルの構造を上手に生かしており、この辺ではJALの方が一枚上手だなぁと感じさせられる所です。落ち着きながらも、旅に向けワクワクする気持ちを生み出す空間デザインがとても上手です。・・・成田の雰囲気に似てますね。
専用検査場のすぐとなりに「JAL SAKURA LOUNGE」と「JAL DIAMOND PREMIER LOUNGE」の入口があります。もちろん「DPラウンジ」にはANAの「SUITE LOUNGE」同様、専用検査場からダイレクトにつながっている入口もありますが、サクララウンジは一旦パブリックスペースに出てから再度このドアをくぐり入場する形となります。普段はあまりお世話になりませんがこの「SAKURA LOUNGE」という名称、いいですよね。「ANA LOUNGE」という無味乾燥な名称に統一してしまったANAの神経がわかりません。・・・昔ラウンジ名称は「SIGNET LOUNGE」という名前があって結構気に入っていたんですがねぇ。。。ま、逆を言えば「DIAMOND PREMIER LOUNGE」って名前はダサいですね。
ラウンジの窓側座席に座ると窓からの景色は国際線ターミナル側を見渡せる「JAL View」となっています。目の前に見える滑走路は「A滑走路(16R/34L)」。かつて「羽田東急ホテル」があった方向を見ているわけです。
私の目の前には出発準備中の「Boeing767-300」が駐機中で、背後の滑走路にはひっきりなしに到着機がスラストリバースの音を轟かせながら通過してゆく様子を眺めることができます。この時は一瞬雨が止んでいたので路面が乾き始めていますが、なんとも冴えない曇天に囲まれた景色も空港で見ると何故かワクワクするもんなんで不思議ですよねぇ。
同じポイントから視線を左側に降ってゆくと別の出発準備中の機体を見ることができます。景色の奥には到着したばかりのANA機が視界に入ります。この日は離陸するまでどこかに炎上した大韓航空機が置かれていないかと探しましたが、どうやらハンガーの中に仕舞われてしまったようで、見ることは叶いませんでした。
企業コラボに熱心なJALらしく、ラウンジでも「FamilyMart」とのコラボレーション商材が積んであります。今月は「サッポロポテト”濃いバーベQあじ”」の様で、ホテルで食べようと一つ頂きました。この辺の洒落っ気はANA側にあってもいいんですけどね。
喫煙室は簡易の腰掛けを備え付けているANAラウンジとは異なり、完全なスタンディングスタイルです。しかしながらスモーキングルームの照明がシティホテルの喫煙室っぽい落ち着いた間接照明で作られているので個人的にはかなり好きです。ANAの喫煙室と違い、窓を用意していないので実現できる世界観でもありますが。
と、ここで一服しそろそろボーディングタイムが迫ってきましたのでゲートへ移動しようと思います。事前に確認していましたが、山形便はバスボーディングの様ですので少し早めに移動しないと慌ただしいことになってしまいます。
しかしながら折角JAL側に来たので、旧管制塔の真横にあるゲートとして有名な「24番スポット」を見学に行きました。普段見ることがない第1ターミナルの辺境の景色は、少し古びた建物たちとのコラボレーションにより、どこかヨーロッパの空港を見ている気分になり旅心をくすぐられます。ぜひ、おヒマがあったら一度見に行ってみてください。近くにちょっとレガシーな感じのコーヒーショップなどもあり「昔の羽田空港」の雰囲気を唯一味わえるエリアではないかと。ここの空気壊してほしくないなぁ。
そのままバスボーディング旅客用の1Fへ降りて行きまして、搭乗開始までしばし待機です。昔はよく「日本エアシステム」便で地方へ行く時にここに連れてこられた印象があります。なので必然的に地方マイナー路線を利用する旅客が多く集う空間になりますので、独特の「超旅慣れた人」「地方へ帰る人」「旅慣れてないけどひょんなことから地方へ出張の人」とメジャー路線の旅客とは異なったポートフォリオがとっても静かな、そして様々な思いが交錯する人生の交差点風の空気感を生み出して、それはそれは「飛行機の旅」の旅情がMAXになるエリアなのです。
ラウンジでふんぞり返って、そのまま優先搭乗でプレミアムクラスにどっかり座るってな幹線中心の出張を繰り返す人たちにはわからない、素敵な地に足のついた旅の原点の様なものを感じられる場所なんですよね。
バスボーディングへの優先搭乗(結局はバスを一番最後に降りることになるので、事実上の非優先搭乗・笑)で最前列が取れましたので、見るでもなしにインパネを覗いているとバスには結構細かい情報が記載された液晶画面が。・・・近年はこうやってしっかり管理されているんですねぇ、こういう部分の技術革新(ってほどでもないでしょうが)もとっても興味深いものです。この時点で本日の搭乗便のシップナンバーが「JA219J」であることも理解できました。
この写真の右側奥にちょうどジェットエンジンの左側にぼやけて写っている機体が、本日の搭乗機です。
搭乗機に到着すると雨脚が強くなってきました。ローカルを結ぶには最適なキャパシティと最新のアビオニクスに支えられる名機「エンブラエル」です。こういうコミュータージェットがもっと頻繁に飛行してくれれば航空機の旅は身近なものに近づいてゆくでしょうし、東京への一極集中を少しでも緩和することになるとは思うのですが、この辺はニワトリタマゴなんでしょうねぇ。
機内から見る窓には水滴が一気に付着し始め、羽田の上空を強めの雨雲が横切ろうとしている様子を感じることができます。
本日私を山形まで運んでくれるのは「JAL179便(HND-GAJ)」、機材は「エンブラエル170(JA219J)」です。このE170は76席全てが一般席ですので今回は一般席移動、そして前方席である必要がないので最後方の一つ前の「18A」という座席をチョイスしてみました。
17:28にドアクローズ、南側に頭を振ってプッシュバックされながらエンジンも同時にスタートシークエンスです。同36分にタクシーアウト、滑走路へ向け移動開始します。先日ANA便の北ピアから撮影した「旧管制塔」と「新管制塔」を真逆の方向から眺めます。
こうやって地上移動している間にもどんどん地上付近の視程が悪くなっており、今後しばらくは羽田は悪天にカバーされるのだろうな・・・という印象です。途中引っかかることもなく、スムーズに離陸滑走路である「RWY34R」へ到着。
この頃には窓には大粒の雨が当たる様になっており、滑走路路面も完全にウェットになってしまいました。写真にも写ってはいますが、先行する「AIRDO」機の離陸を待ち、滑走路へ。
17:47、私たちを乗せたエンブラエルは予想より長めの滑走の後地上を離れ、強い雨雲が控える東京の空へ旅立ちます。
景色の奥の方である西側からは強めの雨と低いシーリング(雲底)がかぶさってきている感じが見て取れます。雨雲による気流、気圧の変化により離陸後すぐに機体は左右に揺さぶられ、旋回時に機体が傾きすぎるのを抑えながら旋回するというダイナミックな動きを早速堪能させてくれます。
景色がグングン暗くなっていき、翼からは大量の水分が放出される様子をしばしみていると、再び景色が明るく変化して行き、雨雲の終わりが近いことを知らせてくれるのです。・・・そう、航空機はどんなに地上が悪天候でも一旦離陸してしまえば待っているのは365日24時間の晴天域。雲を突き抜けて一面の青空へ飛び出す瞬間の開放感は言葉で表現できないほどの良さですよね。
離陸後数分でいよいよ雨雲の先にある青空が見えてきました。しかしながら同時に夕暮れの時間帯でもあるので、視界には青、黄色、オレンジ、赤、そして黒など人間の目の優秀さを改めて感じさせてくれる自然の雄大なグラデーションが広がり始めます。本当にこういう景色を写真で再現することは難しいですよね。
突き抜けました!
やがて地平線の向こうに沈みゆく太陽の光を機体いっぱいに受けながら離陸上昇を続けます。この頃には一旦気流が安定し、ベルトサインが消灯します。
この日はラウンジではコーヒーをガブガブ飲まず、機内でゆっくり飲もうと我慢していたのでベルトサインオフと同時に始まる割と味が好きなJALのコーヒーを堪能しようとドリンクサービスに掛けていたんですが・・・
出てきたのは飴ちゃんだけ。。。
あぁぁぁぁー!近距離フライトすぎてドリンクでないの知らなかったぁぁぁー!
飛行機好きとしては一生の不覚。
こんな予想できる事態を何故予想できなかった自分!(呪)
ということで「ナガタのハッカ飴」をなめなめしながら呆然と外界に目を送るのです。
というエンブラエル君、機内は「2-2」の4列配置アブレストとなっておりまして、レッグスペース含め結構広々としていて快適なんですね。機内は「JAL SKYNEXT」仕様の座席が付いておりますので、黒革のシックな雰囲気も相まりコーヒーが飲めないこと以外不満はありません(笑)。
そういえば、あまり真剣にとる時間はありませんでしたが、なんとなくエンブラエルのトイレを撮影してみました(この写真だけiPhoneですけどね・笑)。
これがまた結構機能的で、且つ意外と広く、見かたによってはちょいとだけスペースシップの中の様な雰囲気でクールなんです。これは発見。限られたスペースを上手に活かし切ろうっていうデザインの努力を感じずにはいられない秀逸なトイレでした。
あぁ、ちなみにこの機材は先日の「伊丹スポッティング」で撮影していた様です。撮ったかもな〜と読み返してみたらまんまとありました。
(伊丹で撮影していた本日の搭乗機)
乗ってる時点では全然気づいていないんですが、こうやって撮影したり、外から見ていた機体で旅するのもまた格別です。コーヒーは飲めませんが(まだいうか・・・)エンブラエルの快調な飛行に大満足しながらふと外を見てみると・・・。
景色も素晴らしいぃぃぃぃ〜。
立派な雲海の上をスゥーっと私たちは飛んでいます。飛行距離が短いので高高度まで上がっていなかったことが幸いし、雨雲の様な低層雲の上端にも近い距離で飛行していたため奥行きのある空の景色を楽しむことができました。真正面から太陽の光を受ける形となるので、撮影する方はめっちゃ大変ですがね(笑)。
18時過ぎ機体は着陸に向け高度を落として行きます。すぐに広がっていた雲海はみるみる近づき、私たちを再び「灰色の世界」へ誘います。時速800km弱で飛行する機体がまさに雨雲にダイブしてゆく瞬間の写真がこれです。
この直後に私たちは再度訪れたモノクロームな景色をみながら、目的地山形での降機に向けた準備に入るのです。
はい、見事にモノクロームな世界。雲を抜ける頃にはかなり高度が下がっており、近隣の急峻な山々の尾根が間近に見え旋回を繰り返してアプローチしてゆく航路と相まりかなりの迫力です。
合わせてこの日は雨雲を呼び寄せた前線の影響でメタクソ気流が悪かったので、降下中は「強」に分類される「モデレート」クラスのタービュランスによる揺れで、外の景色を撮るにもカメラは揺れ、体は定まらず・・・と結構堪能できる揺れ日でした。
細かなSIDはちょいと知らないのですが、この日は一旦空港を遥か北まで通り越し、右旋回で180度ターンをしてダウンウインドへ、その後再度180度の左旋回をしながらベース&ファイナルへというアプローチでしたので、揺れながらグイグイと高度を落としつつ旋回を続けるというダイナミックに窓の外の景色が変わってゆくものでした。
そして着陸直前には夕日に照らされた水田や家屋が黄金色に輝く優美な景色が広がり、日本の原風景とも言える絵画の様な景色に思わず見とれてしまいます。まだまだ本当に日本にはいい景色が残っていますし、こうした世界を楽しめるのもローカル便の醍醐味だと言えるでしょう。
接地直前には一旦角度的に夕日は隠れるものの。。。
接地と同時に再び現れる夕日。
なんでしょう、心洗われる景色ですね。
山形での仕事の内容は書けませんが、滞在中本当にいい街だなぁと、ほぼ今まで認識していなかった山形の魅力を知ってしまった感じです。
着陸後は地方空港ではメジャーな「滑走路上でのUターン」を行います。エンブラエルは小さいのでこのUターンパッドは余裕十分らしく、結構な速度で180度転回を行い、一路ターミナルビルへ機体を加速させて行きます。
ということで無事18:35、「おいしい山形空港」到着です。
この便を入れて、この山形空港を離発着する便は1日わずか10便(到着5便、出発5便)。日本のローカル空港、これ以上作れとは全然思いませんが、存在する空港はもう少し上手に活用していきたいものですね。。。
もちバゲージ用のカルーセルは1器。短距離なのに結構な人数が荷物待ちしているのは少し驚きました。この後ワラワラっと人が増える前の写真です。
さて、到着です!この後市街地までのシャトルバスが出てますのでそれに飛び乗り一路山形市街です。
帰りは時間の関係で飛行機ではなく新幹線で帰ったのですが、そのお話は別のタイミングでご紹介します。
わずか上空36分「羽田→山形」の旅。短いですが、その景色、到着地の趣全てが今の私に価値のあるものでした。予期せず最高のご褒美をもらった気分です。もう一度この路線を忘れないうちに楽しめる様に予定を組もうかと思います。
ではまた!
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【コメント・メッセージ】
ちなみにではありますが「Embraer190(エンブラエル190)」に乗って旅をした記事はこちら(→http://styledeptcreative.blogspot.jp/2016/01/amsterdam-to-tokyo-kl1722-bru-ams.html#more)です。
この時はアムステルダムからロンドンヒースローまでの短距離でお世話になってます。キャリアはKLM。海外ではボンバルディアのジェットだったり、エンブラエルだったり乗る機会があってなんとも楽しいのですが、国内でもこういうコミューター機を楽しめるのって素敵ですねぇ。
あぁそうそう近々「アブロ」に乗った記事も書こうと思ってます!高翼式の4発ジェット旅客機、マニア垂涎の日本では乗れないやつです。お楽しみに~。