今日はちょっと暇ネタ的なものをあげてみようと思います。
中長距離フライトで使用するANAビジネスクラスのシートは現在多くの機種で「ANA Business STAGGERED」と呼ばれる、互い違いに配置された座席により、すべての座席が通路に面している(他人を気遣うことなく出入りできる)シートを採用しています。といっても、このシートが装着されているのは「787-9」「787-8」「777-300ER」の3機種だけですが、まぁこれでほとんどの中長距離フライトをカバーし始めているので、ANA中長距離国際線でビジネスクラスに乗ると高い確率でこの座席が配置された機内に出くわしますよね(東南アジア路線や、中国路線には比較的古い機材を振り分けているので、確率低いですが)。
で、このシート。実は上記3機種全く同じものが付いているように見た目は感じるのですが、実は全然違うというか、それぞれのバージョンが存在しまして、微細な点で異なるのです。
特に今回この記事を書こうと思ったのは、その中でも一番新しく今後長距離国際線の舞台で主流になるであろう「Boeing787-9」に装着されているバージョンが至極私的には使いかっての悪い、改悪座席になっていたという点で「あちゃ〜・・・」という感想を持ったからなんですね。。。
ということで、各座席を見比べていきたいと思います。
①「足元の荷物入れの奥行きが何故か浅くなっている」
②「シートコントローラーが簡略化されていて、好みの位置に調整しづらい」
これ、写真を見てもらえば一番わかると思います。
上が「787-9」のもので下が「787-8」のものです。-8でいうところの「RECLINE」の項目が消えているので「TRACKING」でシートを前後に動かす、または「UPRIGHT/BED」で移動させる際に勝手にシートバックの角度が調整されるのに従うしかないんですね。シートは動かすと腰が沈み込んだり、腿の部分が持ち上がったり、細かく角度が勝手に変わるんですが、その最適値を調整しづらくなっています。
あと、スイッチを見てお分かりの通り・・・
あの妙にいやらしい「SIDE TABLE LIGHT」がひっそりと廃止されています(笑)。
好きだったのになぁ。。。(涙)
③「シートを囲む壁が実はなんと低くなっている!」
787-9に乗った時に、妙に落ち着かないなぁ・・・と思いつつ理由が分からなかったんですが、着陸前にトイレに行き帰ってきたタイミングでマジマジと椅子を見ていて気付きました。そう、あの個室感を演出していたシートの壁部分(要するにシートパッケージのウォール)全体の高さが低くなっているんです。なので、今までは座ってしまえば視界に入らなかった他の旅客の動きが視界に入るせいで、個室感が弱まり、結果「妙に落ち着かない」座席になっていたんです。
これも、上が-9、下が-8なんですが、テーブルからシートの天井部(翼の王国などが収納されているトレイの上部部分)までの距離が短く(低く)なっていること、気付きますでしょうか。-9の写真では奥にクローゼットが写っていますがこのクローゼットの高さがシートの最高部の高さです。下の-8の他の座席の最高部の位置と見比べても圧倒的に低いのがわかるかと思います。
なんかいい写真ないかなぁ、と公式サイトを見ていたら決定的な写真がありました。
わかりますよね、座席最高部の上まで壁のある下の写真の-8に比べ、上の写真の-9は頭上がスカスカで妙に見晴らし良いの(笑)。なんでこんなことしちゃうかなぁぁぁぁ。。。
旧来のスタッガードでは「個室すぎて他の同乗者(夫婦やカップルなどの場合)と話しづらい」とか「CAさん達が旅客の状況を掴みづらい」とか、「万が一の脱出などの場合に視界確保などの安全面の課題?」とか何か理由があったんでしょうが、いや、本当にこの-9のシートは・・・
「落ち着かないっす。嫌い。」
④「テーブルが前方からのスライド式ではなくサイドローディング式に」
これもねぇ。今までのテーブルは前方の液晶画面の下から引き出して使う方式だったので、自由に前後させたり、必要ないときはギリギリまで押し込んで、少しだけ出した部分にものを置いたりできてとても重宝したんですが、-9ではサイドテーブルの下から引っ張り出す方式になっていまして、使い方としては「出すか、しまうか」の二択になってしまいました。。。これがえらい使い勝手悪くて、さっさとしまいたい!って気分で食事をゆっくりするどころじゃないんですよね。しかも、一度出しちゃうと、しまうためにはテーブル上のものを全て片付けないと(デザートやコーヒーなども)いけないんで、デザート中にちょっとだけトイレ・・・みたいなこと不可能です。今までは最低限までテーブルの上を片付ければ押し込んでスルリ・・・と脱出可能だったんですが。。。
何のためのスタッガードなんだよ?(笑)。
一応ANAの面目のために追記しますと、おそらく引き出し式のテーブルは、後ろの席の方のテーブルが入っている箇所は自分の座席のサイドテーブル下という位置関係になるんですが、出し入れの際にゆっくり操作しないと全席の構造物が「ガシャン!」と振動することになるんで、そのクレームに対応したものだと推測されますが、でも使いにくいものは使いにくいっすよ、マジで。
⑤「消えたカップホルダー」
もうここまで来るとネタなんじゃないかっつー位、使い勝手無視。上の写真でもわかるかと思いますが、サイドテーブル奥に備え付いていたカップホルダーが消えておりまして、巡航中に貰えるペットボトルの水を差し込む場所がないっす。なので、写真の様に所在なさげにサイドテーブル上に置かれる羽目に。。。
⑥「意外と使い勝手の悪い新型スカイマップ」
これはANAというより、BoeingのAVOD開発チームのせいだとは思いますが、-9には新世代のAVODが装着されています。基本的な内容は一緒なんですが、スカイマップはかなり刷新されていまして、非常に細かい情報を見ることができるんです。
・・・って思うでしょ?
ぶっちゃけ使いづらいっす(汗)。
且つ「機体の昇降率」まで見れるし、どうやら、「ピッチ(前後の傾き)」「ロール(左右の傾き)」まで表示できそうで、めっちゃ期待したんですが・・・
表示データの信頼性ゼロ(汗)。
一体何のデータを引っ張っているのだろうか・・・。
航空機に詳しい方ならわかると思いますが、私ワクワクしてこの「昇降率」モードにして、離陸を待ったわけですがなんと画面が表示した離陸時の昇降率(Climb rate)・・・
13,500ft/min(即死)。
ロケットかよ!ってことは、巡行高度にこの機体は3分で到達するのかっ!!!
挙げ句の果てには飛行中の12時間、様々なモードを呼び出しは試しましたが私の現在の研究結果ではですね・・・
ピッチとロールは表示しません(号泣)。
データが流入していないものと思われます。。。まぁ、唯一正確だろうと思われるのは「HEADING(機首方位)」と「ALTITUDE(高度)」だけでしょうね。恐ろしく期待はずれです、このAVOD。。。
挙げ句の果てにはマップを切り替えまくっていると画面がフリーズして、一部画面が真っ黒になったりプロセッサの限界を超えることが多くてですね、萎えます。そういう場合は一旦「AUTO PLAY」に切り替えるとリフレッシュされました、私の場合。皆様も固まったら一度試してみてください。
とまぁ、期待値が高かっただけにまさに失望の雨あられだった「787-9」ではありますが、機体自体は素晴らしいです。787-8のセカンドジェネレーションから更に進化しているフライトコンピューターは澱みなく揺れを回避しますし、空気抵抗を抑制する「Hybrid Laminar-Flow Control (HLFC)」、「Early Doors Operation (EDO)」などの装備の恩恵で燃費も良いですし、何より地味にフラップの設定角を追加しているおかげで様々な重量状況に対して最短の滑走距離で離陸できるなどオペレーションにおける進化も遂げています。
もう少し乗り込んでから最終的に-9の評価を下すべきだとは思いますが、ビジネスクラスの居心地という点では、現状-8には劣る印象です。
最後に、787-9、787-8のそれぞれできるだけ同じ画角で撮影した写真がありましたので、雰囲気のご参考に貼っておこうと思います。というか、この写真を貼った段階で思い出したもう二つの改悪点。
⑦「夜間灯消滅!」
もう嫌だ。コストダウンかしら。。。
下の写真を見比べていただければわかると思いますが、下の787-8の写真で点灯している画面上部に付いている夜間灯(夜中にちょっとした作業をするのに便利)すら消滅してますね。。。
⑧「ナイトライト消滅!」
これすげーわかりにくいんですが、下の-8の写真をよく見てください。画面と引き出したテーブルの隙間の奥がうっすらブルーに光ってるのがわかると思います。これ、任意でつけたり消したりできる、オットマン内の内照灯なんです。めちゃくちゃ弱いあかりなんですが、真っ暗なキャビンではこの灯りである程度自分の姿勢や、布団の状態を把握できるんで便利な灯りなんです。
これすら消えていましたね。。。
ま、-9をボロクソに言うのはこの辺でやめにして。。。次行きましょう。
さて、その-8とほぼ兄弟型のシートが装着されているのは長らく長距離国際線の主力機であり、今後のBoeing777-Xの導入などを見越してもまだまだ主力機であり続けるだろう「Boeing777-300ER」です。
787-8の時の写真と要するに同じですが、実際787-8の座席の写真は間違いですので、この777-300ERの座席写真の方が対応的には正しいことになります(しっかりしてくれ、ANA・・・)。
そして、先ほどの787-8のシート写真。私は「窓にシェードがあるじゃん!」という事で間違った写真だと書きましたが、実はマニアな方なら分かる「決定的にあのシートが787-8のものではない部分」が含まれています。これがほぼ唯一の787-8と777-300ERのスタッガードシートの違いとも言えるのですが。
【コメント・メッセージ】
[…] […]
>ma-yamanakaさま
記事拝見させていただきました、さすがyamanakaさん。一瞬で-8と-9の違和感に気づかれた様ですね。
また、帰国後WEB検索でたどり着いていただき、さらには記事中にリンクを貼っていただき感謝いたします。
Platinum Lifeにリンクしていただけるなど望外の喜びです。普段から記事を楽しみに拝見させていただいて
おりますので、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。
はじめまして
B787-8とB787-9の全日空の機材で違和感を感じており検索していて貴ページに辿り着きました。
詳細な比較情報を拝見してなるほどと思いました。
また勝手ながら私のブログからリンクを張らせて頂きました。もしご迷惑であればご指示ください。削除させて頂きます。
貴重な情報ありがとうございました。
以上です
>mm-kl様
コメントいただきありがとうございます!
なんとも好き勝手に書いているこの記事がとっても多くの方に読んでいただけている様で恥ずかしい限りです(笑)。
アジア線ビジシートの調整幅は本当に狭いですよね。アジア線といえどあからさまなコスト節約感を感じるのはどうも
ANAさんの悪癖で、ブランド体験とかをあまり重視していない(しててもピントズレてる)印象を受けちゃいますね。
今後のビジネスクラスやファーストのシートやサービスの新展開に期待です。
mm-klさんも引き続き良い空の旅を!
いろいろなANAのシートの話、興味深く読ませていただきました。
最後に記載されてる、787のCRADLEのシート調節ボタン。私も何度か乗っていますが、本当に2種類しかないので、好きな形に調節できず困りものでした。
折角なんでよく一緒に出張をする同僚にJALのシートの写真を貰って比較するのも面白いですね。ANAスタアラ系はよく紹介出来ているブログではありますが、スカイチーム、ワンワールド系は甘々ですので。。。
みなさんも航空機の座席に関し「これどうなの?」「ここいいよね!」的な思いがあればぜひ教えてくださいませっ。